2011年8月5日金曜日

妻の失恋 (終)

(1)はこちら、(2)はこちらを、(3)はこちらを、(4)はこちらをどうぞ。

アホみたいな話をさんざん引っ張って、5回目まで来てしまいました。

ちゃんと今日で終わりますからね。


鏡に映るおのれの姿を見つめながらタラーリタラーリと汗を流すのはガマガエルですが、ギターを奏でる (あるいは歌う) おのれを鏡に映すのはわれらが隣人ホームレスのサム。

やだ、ナルちゃんだわこの人

と言ったかみさんの醒めた表情に、彼女の心の変化を見てとることができました。

去年の秋に出会って以来、嵐の日にも寒風吹きすさぶ日にも見守ってきたサムの無事を願う気持ちに変わりはないと思います。

しかしですね、ホームレス暮らしという限定された条件のなかでそういう用途の鏡を持ち歩くというのは、やはりちときもわるであることは否めないでござった。


それ以外は基本的に好印象だったんですよ、サムは。

前にも書きましたが、彼は寝ころがらない。 普通のホームレスだったら、とくにすることがなければ何かにもたれかかって座ったり寝ころがっているものですよね。

また、彼はゴミを残さないし、段ボールのマットレスといったホームレス用品を使わないし置いていかない。 つまり、全体にきれいな過ごし方をしていた。

もちろんこれには、汚くしていると周辺住民から問題視されて追い出されやすいという理由もあるかも。

でもとにかくサムは、なんというかだらしないホームレスではなく、わけあってこのようにしてはいるがちゃんとした人間 ... みたいな雰囲気をかもしだしていたんです。

ま、そのように見えました、4階の窓からは。


鏡事件から数日後の7月中旬。

あの日は気温30℃を軽く超える暑い日でしたが、夕方になって私たちは散歩に出ました。

アパートの広い敷地内をひとめぐりしてみようと思ったのです。

越してきて以来いろいろ忙しく、プールとか花壇とかアスレチックガーデンなどがある楽しげな敷地内をろくに見たことがなかったからです。

えーこんなバーベキュー施設あったんだ、今度使いたいねー

などと感心しながらあちこち歩いたあと、もう少しうろついてみようと私たちは敷地の外へ出ました。

向かった先はアパートの隣にある小さなモール。 長屋式の横長ビルにいろんな店が入っている、アメリカにはよくあるタイプです。

このモールの駐車場とサムが居るファーストフードの駐車場は隣り合ってつながっています。

モールには、セブンイレブンをはじめ、ピザ屋、タイ・レストラン、酒屋、クリーニング屋、ネイルサロン、家具屋など、生活まわりの店がいろいろ。

タイ・レストランの味どうかねえなどと言いながらビルの角を曲がったとたん、10メートルほど先の酒屋の前にどこか見覚えのある男を発見。

ひょろりとした長身にミリタリールック。

初めて間近に見たサムの姿でした。

あ、生サム ...

本物だよね!そうだよね! とささやき交わしながらも素知らぬ顔で歩きつづける私とかみさん。 無関心を装いながら一瞬の目線を送ります。

でもいきなり目の前にサムが出現してことで (というかこの場でいきなり現れたのは私たちのほうですが)、かなりドギマギしていました。 4階の窓からいつも見下ろしている私たちの顔を実はサムは知っているんじゃないかなんて考えちゃったりして。

しかし実際のサムはこっちには無関心で、酒屋の従業員か主人っぽい男性としきりに話しこんでいます。

店のほうはそろそろ閉店時間かという雰囲気。

てなことを視認するのが精いっぱいの短い遭遇でしたが、もうひとつしっかりチェックしたことがあります。

それは、サムの目が濁っていたこと。

白目が黄色く濁っていて、鼻が異様に赤い。 これアル中の特徴。

遠目には30代前半かとも思っていた年齢も、実物は少なくとも40代か。 肌が不健康に荒れている感じが50代後半にも思えます。

申し訳ないけど、薄汚れたオヤジという印象が強かった。


あーあ、これが現実よね ...


溜息つきながらかみさんが口にした推論は驚くべきものでした。

サムはあの酒屋で寝泊まりしているんじゃないか。 酒屋は泥棒に入られることが多く、防犯カメラがあっても犯人が捕まらなかったら損害になるばかり。 主人は、常連客のサムがホームレスだと知るや、夜間を店内で過ごして警備員がわりになってくれないかと打診。 給料は払わないが店内の酒は適当に飲んでもいいという Win-Win 関係が成立した ...

よくまあ思いつくわと感心する想像力ですが、あながちありえなくもないストーリーかと。


その推論の当否はともかく、かみさんがサムにがっかりしたことは確かでした。

あれだけタバコすぱすぱ吸って、それにお酒でしょ? 息臭いし体もくっさいわきっと

と厳しいきびしい。

まあまあそりゃそうかもしれんけどサムもいろいろ大変だろうしさ ...

とモゴモゴ言いながら家具屋やクリーニング屋などをぐるりと一周してくると、なんとサムがふたたび登場。 酒屋から普段の居場所に向かうところでした。

お、そういえばこれまでサムが歩くところをちゃんと見たことはなかったぞ。

こうして間近で見ると、膝がしっかり上がらず少しヨタつくような歩き方。 たしかにこりゃアル中の ...

と思わせる後ろ姿がぎくしゃくと遠ざかるのを見送るばかりでした。



これがサムとの接近遭遇の一部始終。

帰還兵の悲しくも美しいストーリーにはじまり、この日の「アル中診断」にいたるまで、すべては私 (たち) の勝手な想像の産物でありサムの実像とは無関係なのですが、彼を間近に見ることでなにかプーっと空気が抜けてしまった感じは否めませんでした。

それこそ勝手な決めつけで申し訳ないのですが、薄汚れて覇気のない男、そんなイメージだったのです。

かみさんは、私よりもかなりマトモにこの現実にぶちあたっていたようです。

この日を境に、窓下にサムの姿を見つけては私に報告することがめっきり少なくなりました。

さっきまた鏡見てたよ、などの話題がたまに出る程度。 

なんか、あんまり応援するって感じでもなくなっちゃったかな ...

かみさんは多くを語りませんが、そんな気持ちが透けて見えるようです。


9か月ごしの 「恋」 に終止符が打たれたこの夏。

うだるような暑さのなか、サムは今日も樹の下に座り込み、タバコをふかし、ギターを鳴らし、またタバコをふかして瞑想するがごとき雰囲気をただよわせたかと思えばいつのまにか姿を消す毎日です。

酒屋との関係はどうなのか、夜はどこで寝ているのか、荷物はどこに預けているのか、ひんぱんな着替えはどういう仕組みになっているのか、サムの謎はどれひとつとして解けていません。


サム、あんたのこと知りたいような知りたくないような、不思議な気分だよ ...






なんと5回にもわたってしまった駄文、FXブログにあるまじき内容 (って普段からそうだけど) にて恐縮。

「その後のサム」については末尾をどうぞ。



8/5のトレード結果です。 



GBP/USD
 
200SMA: 下降
フェーズ: 下降フェニックス
損  益: なし

悔いの残る展開でした。

速報に書いたように、ボックス内のローソクのヒゲが長いことに警戒していましたが、その後も長ヒゲが続いたのでためらいが強くなりました。

ブレークはしましたが、強い押し目をきらってエントリー見送り。 入ったら━━ストップアウトだったので、これはこれで正解でした。 (下へ続く)


しかし、同時に失敗でもありました。

ブレークまでの陽線3本の力強さを見てトレンドの発生を感じていたので、安全のためストップを40~50pipに設定し、そのぶんポジションサイズを減らしてエントリーする策を考えてはいました。

エントリーしていれば━━39pipの獲得 (ポジションを減らすぶん、実質25pipとかになりますが)

そういうアイデアがありながら、ドル買い介入からトリシェ総裁の景気不安発言による荒波にビビって手が出なかったのです。 根性なし! 下手くそ! まあ結果論ですが。

GBP/USDの成績表はこちら (常に最新のものにアップデートされています)



♪ヘッドラーイ、テールラアアーイ (←わかる? プロ●●クトXのエンディング)

その後のサムです。

一貫してサムひとりが占有してきたスペースに、最近別キャラが割り込んできています。

白人がひとり、黒人がひとり。

専業ホームレスかどうか不明ですが、たまに現れてサムの樹の下に段ボールを敷いて寝てたり、居合わせたサムとタバコふかしながら歓談してたりするのを見かけます。

なんで同じところに集まるのかというと、サムのスペースというのは駐車場との境目に低木の植え込みがあるおかげで、ファーストフード店や駐車場から見えにくくなっているから。 やっぱりそういう場所が安心なんでしょうね。

快適なテリトリーに他人が入り込むのはサムとしても大歓迎ではないと思います。

最初のころは喧嘩にならなきゃいいがと心配しながら見ていましたが、なんだか皆でうまくやっているようです。

それと以前は大きな石ひとつに腰かけているだけだったのが、誰が持ち込んだのか蓋つきのプラスチックバケツが3個置いてあり、今でもたまに訪ねてくる「ルーシーとその兄」 とのランチをふくめ、快適そうに座っています。

人間って必ず進歩するんだなあ、なんて妙な感慨をいだいてしまう窓下の景色です。

ところで今日のサムは午後おそく、新しいホームレス仲間と思われる連中と談笑。 そのとき茶色の紙袋に包んだビンから何かをしきりに飲んでいました。

紙袋に入れたビンというのは、公共空間での飲酒が禁じられているアメリカでは、アルコールを意味します。

まあいいんだけどねサム ...

スパスパ吸ってるそれ、タバコだよね?


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