勝てるＮＹボックス: ＴＰＰで考えこんじゃった

ＴＰＰが日本のためになるのかどうか、私にはわかりません。

全体像をつかむには知らなければならないことが多すぎるし、質の悪い議論もたくさん出ているようなので、情報の選択がたいへん。

なんでもかんでもアメリカの陰謀にしたがる人がいて、そういう調子の反対論もあるようですが、今さらアメリカが日本から取れるものってそんなにあったっけ？という感じもして．．．

ＴＰＰの全体像についての冷静で客観的な検討材料がたくさん出てくるといいですね。

それはさておき。

「ＴＰＰは日本の農業をダメにする」という声が多くでています。

なかでも「ただでさえ震災で弱った東北の農業がつぶれてしまう」というある野党党首の発言を聞いて、すこし思ったことがあります。

ここにはふたつのキーワードがあります。

東北、そしてコメです。

同じ農作物でも、野菜や花などはすでに関税がゼロかとても低いですが、国産品が流通の８０～９０％を占めており、ＴＰＰに参加したとしても打撃を受けるとは思えません。

だからＴＰＰが日本の農業全体を壊滅させるといった話は信じられない。

しかしコメは事情が違う。　

今は７７８％という関税によって守られているので、ＴＰＰによる影響はあるでしょう。

コメ農家が不安に思うのは無理もありません。

でも、ＴＰＰ参加によって入ってくる安い輸入米は、本当にコメ農家を潰してしまうんでしょうか？

９３年のできごとを思い出します。

冷害のせいで需要の８０％しかコメがとれず、どうするんだという騒ぎになりました。

私はピントがぼけている人間なのか、足りない２０％ぶんはパンでも食えばいいじゃんと言っていました。　どうせ１年かぎりの不自由にきまっているんだし。

ところが大半の日本人はそう思わなかなったようで、コメのメシが満足に食えないなら生きていけないというほどの嘆きの大合唱がおきました。

パニックともいえる騒ぎでした。

日本人のコメへのこだわりの強さに心底おどろいたものです。

そうなると政府も放ってはおけず、各国にコメの緊急輸出を依頼しました。

タイ政府は日本支援の気持ちをこめてコメを融通し、送ってくれた。

しかしせっかくの善意のコメも、その多くが港に山積みにされたままで終わってしまいました。

タイ米（インディカ米）は、ジャポニカ米とちがう調理法をしないと日本人の口に合いにくいが、そうしてまでタイ米を食べたい人があまりいなかったからです。

サックサクで美味しいんだけどなあ．．．

私はカレーやピラフなんぞを作ってタイ米を楽しんでいたのですが、周囲には

「あんな不味いコメ、冗談じゃねえよ」

と吐き捨てるように言う人がたくさんいました。

結局、タイ米は安価にもかかわらずほとんど売れず、消費者は価格が跳ね上がった国産米を奪い合いました。

つまり日本人は、コメならなんでもいいわけではなかった。

あの ふかふかモチモチのあったかご飯 でないとダメだったんですね。

コメの品質にとことんこだわる日本人。

この執念があれば、よそから来たコメにやすやすと乗り換えることはないだろう。

９３年の体験から、私はそう思っています。

さて、世界では日本と同じジャポニカ米も作られていますから、そっちは国産米と競合する可能性があります。

カリフォルニア米で知られるアメリカを見てみましょう。

アメリカで生産されるジャポニカの総量はたったの３０万トン。

仮にそのすべてを輸入したとしても、日本の米の生産量の４％にしかなりません。

寿司をはじめとする日本食ブームが起きているアメリカでのジャポニカ販売をいっさい中止し、すべてを日本へ輸出し、それが残らず売れるという実際にはあり得ない仮定をしても、その程度のインパクトです。

また、世界の食料事情を考えれば、関税障壁をとりのぞいたからといって途上国をはじめとする各国のコメがなだれをうって日本へ流入するとは考えづらい。

繰り返しになりますが、売り込もうとしても日本人の舌がそれを選ばないだろうと思います。

ＴＰＰは日本のコメ農業を壊滅させるのか？

私は、そういうことは起きないというほうに一票を入れます。

ところで仮にですよ、仮に安いコメがなだれこんでコメ農業が壊滅したとしても、これを経済問題として見るかぎりたいしたインパクトはありません。

コメの生産額は日本のＧＤＰの ０．３６％ を占めるにすぎないからです。

なーんて言ったら、憤慨する人がけっこういるんじゃないでしょうか。

コメを経済問題としてドライに語るのはちょっと違うんじゃないかという感覚。

コメは単なる商品ではなくもっと神聖なものという感覚が、日本にはあるような気がします。

そしてその「神聖なるコメ」が東北を苦しめてきたという話になるのですが、ちょっとくたびれたので続きは明日にでも。

いや真面目な話は疲れます。

読むほうも？　

これはご無礼でござった。

　
１０／のトレード結果です。　